研究概要 |
これまでの検討で、mRNAレベルならびに免疫染色により腫瘍細胞、異形上皮ではCOX-2の発現が増強していることが明らかとなった。下咽頭癌標本75例のパラフィン切片を用いて行ったCOX-2の免疫染色では、正常粘膜細胞では発現が全くみられなかったのに対して、腫瘍細胞の細胞質で97.3%、腫瘍近傍の異型上皮の細胞質で58.6%のCOX-2発現がみられた。また臨床データと免疫染色の結果で関連性について検討を行ったが、明らかな相関はみられなかった。培養細胞では数種の細胞株の培養を行い、COX-2の発現量を検討した。その結果COX-2高発現のSCC25、中等度発現のCa9-22、低発現のHSC4の3種類の細胞株を同定し、今後の実験材料とした。次にCOXによって誘導されるPGE2の直接的な作用を解明するため、PGE2 receptorの発現について検討すべく、数種類の培養細胞においてRT-PCR法を用いて発現の有無を検討した。いずれの細胞でもEP4 receptorの発現は認めたが、EP3では発現の程度に差を認め、EP1,2は細胞によっては明らかな発現を認めないものがあった。また、生検あるいは手術で得られた組織12例(上顎、喉頭、舌)を用いて同様に検討すると、EP1で10/12、EP2で9/12、EP3,EP4では12例全例でmRNAの発現を認めた。免疫染色による検討では、腫瘍組織の検討に先んじて、positive controlとして腎組織を用いてEP3,EP4 receptorの発現を検討したが、明らかな染色を認めなかった。現在抗体の種類や濃度を変えて検討中である。
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