平成18年度に施行した研究を本年度も継続して行った。 昨年度、以下の知見を得ている。ヒト末梢血、口蓋扁桃B細胞のほとんどが、RP105陽性で、口蓋扁桃B細胞においては疾患間で差は認めなかったが、末梢血において扁桃病巣感染症患者でRP105陰性のB細胞が若干多く認められた。また、急性感染の患者の末梢血においてもRP105陰性のB細胞は増加している。本年度も症例数を増やして同様の検討を行ったが、扁桃病巣感染症の患者の中にはRP105陰性のB細胞が末梢血中において増加している症例は認めるものの、慢性扁桃炎患者、健常人と比較して統計学的に有意な差は認めなかった。また、IgA腎症の上気道炎による臨床症状の悪化を検討する目的で、口蓋扁桃B細胞のin vitroにおけるLPS刺激実験も継続した。比重遠心法にて口蓋扁桃、末梢血単核球を採取し、CD19陽性細胞を磁気細胞分離システムMACSにて単離した。LPS刺激及び抗RP105抗体刺激により、B細胞表面のCD80/CD86の発現が増加することをFACSにて確認した。この結果から、B細胞がRP105を介して、直接活性化されることが示唆された。また、活性化したB細胞はRP105陰性になることが明らかになった。以上から、RP105を介したB細胞の活性化が示唆されるが、慢性扁桃炎、扁桃肥大と扁桃病巣感染症の間で有意なデータは得られず、今後、RP105が扁桃病巣感染症としてのIgA腎症の診断、治療の指標になりうる可能性については否定的である。IgA腎症に対する口蓋扁桃摘出術の効果は、広く認められてきており、その発症メカニズムの研究は重要と考えられる。今後も、口蓋扁桃を用いた研究を継続していく予定である。
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