研究課題
基礎実験1.(細胞の採取・培養)実験動物としてウサギやラットを用い、気管、皮膚、口腔粘膜および鼻粘膜より線維芽細胞を採取培養した。気管内腔面よりプロナーゼによる酵素分散法にて上皮細胞を採取し、線維芽細胞との共培養に用いた。各組織に由来する線維芽細胞を各々I型コラーゲン溶液に懸濁しゲル化させ、線維芽細胞を含むゲル上に得られた上皮細胞を播種し通常培養し、コンフルエント到達後は、上皮の形態形成を促進するため空気暴露培養をおこなうことができた。基礎実験2.(線維芽細胞が及ぼす影響)各組織に由来する線維芽細胞が気管上皮細胞に及ぼす増殖(図1A)、移動(図1B)、形態(図2)への影響について比較した結果、鼻腔粘膜に由来する線維芽細胞は、上皮細胞に対する増殖および移動促進効果が低く、誘導された上皮細胞の形状も円柱上皮ではなく立方上皮であった。皮膚線維芽細胞は気管上皮細胞に対して気管線維芽細胞と同程度の増殖、移動促進作用を示した。しかし、皮膚線維芽細胞によって誘導された上皮層は、二層構造を呈しており、上層は気管上皮層の特徴を示し、下層はin vivo皮膚と同様に発達した基底層と扁平上皮層を有していた。歯肉粘膜に由来する線維芽細胞は、気管上皮細胞の増殖、移動、細胞分化気管線維芽細胞と同等もしくはそれ以上の促進作用を示し、誘導された上皮層の形態も正常気管上皮の特徴である偽多列線毛上皮層であった。歯肉粘膜の採取は容易であり、患者への負担も少ない。口腔粘膜の線維芽細胞は気管以外の他の再生分野で既に臨床応用されてその安全性が示されていることから、気管上皮層の形成を促進する線維芽細胞の供給組織として口腔粘膜が最も適切であると考えられた。
すべて 2006 その他
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