研究概要 |
当科で樹立した頭頸部扁平上皮癌培養細胞株16種において,EGFR蛋白だけでなく,HER-2蛋白の発現に関してもウェスタンブロット法で定量した。また,EGFR tyrosinekinase阻害剤であるgefitinibと抗HER-2 receptor抗体であるtrastuzumabによる上記16種の培養細胞株での増殖抑制効果をMTT assayを用いて検討し,IC50値を求めた。さらに,gefitinibとtrastuzumabとの併用による効果に関しても検討を行った。 EGFR蛋白,HER2蛋白ともに全細胞株で発現していたが,gefitinib,trastuzumabそれぞれの腫瘍増殖抑制効果(IC50値)との相関は認められなかった。Gefitinibとtrastuzumabとの併用効果に関しては,幾つかの細胞でgefitinib単剤と比較して2剤併用による感受性の増強(IC50値の低下)が認められた.この効果は作用時間により異なり,24時間後,48時間後,および72時間後でそれぞれ有効な細胞株が認められたが,1細胞においては全ての作用時間において有効性が認められた.EGFR receptorsを介した情報伝達は,HER-2receptorとヘテロ体を形成することなども報告されており,今後抗EGFR剤と抗HER-2薬との併用による単剤での無効例に対する治療法の検討や,その感受性に関与する因子の検討により,個別化治療の手がかりとなることが予想される。 臨床検体を用いたgefitinibの効果と当科で検討した遺伝子変異(Exon20のSNP)との関連性に関しては,頭頸部扁平上皮癌に対するgefitinibの臨床試験の導入を待っている段階である。今後臨床試験が行われる際に,mRNAやEGFR蛋白の発現とともにバイオマーカーのーつとして,検討していく予定である。
|