研究概要 |
有毛細胞における新規カルシウムチャネル同定のため、既知カルシウムチャネルについて遺伝子検索を試みた。今回は動物種としてラットを使用することとした。これはマウスとは異なり、ある程度の大きさがあるために蝸牛組織量が確保できること、形態学的研究にある程度の大きさがあるため有利であること、またマウスには及ばないが、ある程度遺伝子の配列同定か進んでおり、遺伝子情報が利用できることなどから決定した。はじめに0週齢の成熟ラット内耳蝸牛から組織を採取し、tRNAをisogen法にて抽出した。十分な量の遺伝子量が採取されていることを確認した後、抽出したtRNAをinvitrogen; superscript IIを用いて逆転写を行い、遺伝子ライブラリーを作成した。3‘末端付近のnon-cording regionから、coding regionにかけこれらを用いて、既知遺伝子の発現状況を検討し、新規カルシウムチャネルと考えられる遺伝子の増幅を認めた。これらの遺伝子において、増幅された領域用いてin situ hybridizationを行ったところ、外有毛細胞に強く発現を認めた。この結果を確認するために認識領域の5'側のプロープを新たに作成し、同様にin situ hybridizationを行ったところ、同様の結果が得られた。 これらの方法にはカルシウムチャネルの5‘末端側がまったくの新規遺伝子であった場合、同定できないという欠点がある。このためTAKARA、5',3'race kitを用いてrace法による同定を試みたが、既知遺伝子の増幅のみが認められた。これらの結果は既知遺伝子のみが発現しているか、あるいは、多量のカルシウムチャネルを発現する小脳の影響が、遺伝子ライブラリー作成の段階で除けないか、どちらかの可能性があると考える。 今後は電気生理学的に外有毛細胞において、これらのチャネルが機能しているかどうかという点につき、薬理学的方法、チャネルカイネティクス解析を用いて検討する予定である。 また、形態学的な根拠を強固にするため、免疫組織学的な検討を行う予定である。
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