研究概要 |
私は好酸球性副鼻腔炎の発症とその病態の解明を行うべく、次の仮説を提唱し、研究を遂行している。仮説)慢性副鼻腔炎患者は正常者と比較して、真菌由来の外因性proteaseに対し過剰な反応を引き起こす準備状態となっており、その一つの原因として慢性副鼻腔炎患者の副鼻腔粘膜では正常者に比較してPAR-2の発現が増強されている。 慢性副鼻腔炎を以下の5群に分類し、さらにコントロール群を加え6群に対し検討を行っている。鼻茸を有する慢性副鼻腔炎患者を(1)気管支喘息合併群、(2)アスピリン喘息合併群、(3)アレルギー性鼻炎合併群、(4)アレルギー疾患合併症なし群、に分類し、(5)鼻茸を有さない慢性副鼻腔炎患者群、さらにコントロール群として(6)副鼻腔炎を合併しないblow out fracture患者を加え検討した。組織の採取に際し、提供者の人権および利益の保護について配慮し、検体提供と本研究の意義を説明した上で患者本人の同意を得た。 方法はABC法にてPAR-1,2,3,4のポリクローナル抗体を用い免疫染色を行った。また陽性細胞の判定のために好酸球(抗ECP抗体)、好中球(抗エラスターゼ抗体)、リンパ球(抗CD3抗体)、マクロファージ(抗CD68抗体)に対する二重染色を行った。 現在までのところ、好酸球性副鼻腔炎と考えられるアスピリン喘息合併群>気管支喘息合併群においてPAR-2、PAR-3の発現が増強されており、特に局所に浸潤している好酸球にその傾向が認められた。他の群ではこれらの傾向は認められなかった。PAR-1,PAR-4の発現増強はどの群においても認められなかった。気道上皮細胞においてもPAR-2、PAR-3発現の増強はアスピリン喘息合併群>気管支喘息合併群において認められたが、他の群では認められなかった。 現在統計学的な検討をおこなえるまで症例を重ねている最中である。
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