研究概要 |
慢性副鼻腔炎の発症とその病態の解明を行うべく、次の仮説を提唱し、研究を遂行している。仮説)慢性副鼻腔炎患者は正常者と比較して、真菌・細菌由来の外因性proteaseに対し過剰な反応を引き起こす準備状態となっており、その一つの原因として慢性副鼻腔炎患者の副鼻腔粘膜では正常者に比較してPARsの発現が増強されている。 慢性副鼻腔炎患者を(1)気管支喘息合併群(ATA)、(2)アスピリン喘息合併群(AIA)、(3)アレルギー性鼻炎合併群(AR)、(4)アレルギー疾患合併症なし群(CRS)、に分類し、さらにコントロール群(Cont)として(5)副鼻腔炎を合併せず副鼻腔経由に手術を施行した下垂体腫瘍患者を加え検討した。PAR-1,-2,-3,-4に対する免疫染色と、陽性細胞の判定のために好酸球(抗ECP抗体)、好中球(抗エラスターゼ抗体)に対する二重染色を行った。 上皮細胞および局所に浸潤した炎症性細胞両者ともAIA>ATA>CRS>ARはContと比較して有意にPAR-2、PAR-3の発現が増強されていた。炎症性細胞では,PAR-2およびPAR-3陽性細胞における好酸球の占める割合は、AIA=ATA>AR>CRS>Contであり、一方好中球の占める割合は、CRS>AR>ATA>AIA=Contであった。さらに好酸球におけるPAR-2およびPAR-3の発現率はAIA=ATA>AR=CRS>Contであり、同様に局所に浸潤した好酸球であってもPAR-2,PAR-3の発現率に違いを認めた。以上の結果からPAR-2およびPAR-3は慢性副鼻腔炎の病態に関与している可能性が示唆された。特に炎症性細胞種とそれぞれのPAR-2・PAR-3の発現率の違いが慢性副鼻腔炎の病態に大きく関与していると考えられた。PAR-2およびPAR-3をターゲットとした慢性副鼻腔炎の治療戦略の可能性が示唆された。
|