研究概要 |
糖尿病網膜症に対する汎網膜光凝固術前後の中心窩脈絡膜血流量変化 目的:糖尿病網膜症における汎網膜光凝固術後に網膜血流量は低下することが報告されているが、中心窩下脈絡膜の血流量変化を検討した報告はない。今回我々は、糖尿病網膜症における汎網膜光凝固術前後で中心窩脈絡膜血流量を測定したので報告する。 方法:汎網膜光凝固術を要する増殖前、増殖糖尿病網膜症患者17名17眼(平均年齢55才)を対象とした。汎網膜光凝固術前と術後1ヶ月後でレーザードップラー血流計を用いて中心窩脈絡膜赤血球速度(CBVel)、中心窩脈絡膜赤血球容積(CBVol)、中心窩脈絡膜血流量(CBF)を測定した。また、同時に光干渉断層計(OCT)を用いて中心窩網膜層厚を測定した。術前に黄斑浮腫のある症例は除外した。 結果:汎網膜光凝固術前後で平均CBVelに有意な変化は無かったが、CBVolは、平均51%増加(術前0.37±0.12 arbitrary units [a.u.]から術後0.52±0.16a.u.,P=0.0025)と、CBFは、平均46%増加(術前7.3±2.4a.u.から術後10.4±4.4a.u.,P=0.0014)と有意に増加した。施行後に再度OCTを施行し、術後黄斑浮腫が認められた症例は無かった。 考察:汎網膜光凝固術後に中心窩脈絡膜血流量が増加することが初めて明らかとなった。今回の結果から血流量の増加は、黄斑部脈絡膜毛細血管の拡張によると考えられた。
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