野生型マウス及びFSCN2遺伝子ホモ欠損型(一塩基欠損型)マウスからそれぞれ網膜mRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を再度行い、再現性の確認を行った。この結果前回実験と同様に、Pctn1・KIF16B・Mtap44等の複数の視細胞関連遺伝子の発現がFSCN2遺伝子ホモ欠損型マウスの網膜で低下していることが確認された。このためこれらの遺伝子の発現量を正確に定量するために、各遺伝子のcDNAを増幅するプライマーを作製し、real time PCRを行った。これにより各遺伝子の発現が野生型のそれに比べて約10%〜50%(例えばPctn1は約10%、KIF16B、Mtap44は約30%、等)程度しか発現していないことが確認された。 アクチン・ロドプシンに対する抗体を入手し、野生型マウス及びFSCN2遺伝子ホモ欠損型マウス(それぞれ生後8週・16週・24週)の網膜切片を免疫染色し、視細胞外節・結合絨毛の各遺伝子型による変化、及び加齢による変化を電子顕微鏡で観察した。微小管の形態には各マウス間ではっきりとした違いは確認できなかったが、FSCN2遺伝子ホモ欠損型マウスでロドプシンが結合絨毛の途中で蓄積し、視細胞外節の成長が阻害されていると思われる像が認められ、輸送の障害が起きている可能性が考えられた。このような輸送障害は週齢が経つ程に進行しているものと考えられた。しかしながら現段階においても抗FSCN2抗体は作製できていないため、前記の変化にFSCN2がどのように関わっているのかは不明であった。
|