昨年度までの解析で、FSCN2遺伝子ホモ欠損マウスでは結合絨毛の途中でロドプシンが蓄積しており、結合絨毛における輸送系の障害が視細胞変性の本態である可能性が考えられた。このためこの病態にFSCN2がどのように関わっているかを解析する目的で、昨年度に引き続きFSCN2抗体の作製を行なっていたが、現段階でも特異性の高い抗体が作製できていない。 一方、野生型・FSCN2遺伝子ヘテロ欠損・FSCN2遺伝子ホモ欠損の各マウス(それぞれ生後8週・16週・24週)の網膜とマイクログリア特異的抗体(抗iba1抗体、抗ED1抗体)を用いて、免疫組織化学的手法により各網膜でのマイクログリアの局在を解析した。その結果、特にFSCN2遺伝子ホモ欠損マウスではマイクログリアが野生型よりも有意に増殖しており、マイクログリアの活性化により視細胞変性が促進していると考えられた。また、FSCN2ヘテロ欠損マウスでも加齢と共にマイクログリアが野生型よりも有意に増殖してみられるようになり、これまでの解析で判明している、FSCN2遺伝子ヘテロ欠損マウスでの視細胞変性が加齢と共に進行することを裏付ける所見であると考えられた。また、各遺伝子型の生後8週のマウスの網膜からマイクログリアの培養細胞を作製し、その上清をミュラー細胞に加え、線維芽細胞増殖因子の産生量を定量した。その結果特にFSCN2遺伝子ホモ欠損マウスでは線維芽細胞増殖因子の分泌量が野生型よりも有意に低下していた。結合絨毛での輸送系の障害がマイクログリアの活性化とどのように関わっているかについては、FSCN2特異的抗体が作製できていないこともあり、現段階では不明である。
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