研究概要 |
網膜芽細胞腫の硝子体播種に対する治療の基礎的研究として、正常家兎眼における硝子体手術後のメルファラン潅流の網膜毒性について検討する。健常白色家兎の両眼に2ポートvitrectomyを施行し、それぞれ5,10,15μg/mlのメルファラン潅流液を眼内に還流したのち、網膜電図(ERG)で網膜の機能的変化を経時的に観察。他眼はコントロールとしてメルファランなしの眼内潅流液を同時間潅流する。4週後に各群1匹において眼球摘出を行い、それぞれの網膜組織学的変化について比較検討する。メルファラン5μg/ml潅流群では全経過中のERGに有意な変化は見られず、網膜組織学的にもコントロールと比べて変化は見られなかった。10および20μg/ml潅流群においてはa波、b波の振幅は、いずれも術後3日目から有意な低下を示し、4週間後も振幅の回復は見られていない。一方、頂点潜時はいずれの波形も潜時の有意な延長は見られなかった。組織学的には10-μg/ml潅流群では網膜外層を中心とした組織の変性・萎縮・脱落がみられ、20μg/ml潅流群では網膜全層の著しい変性萎縮および脱落をしめした。今回の検討では5μg/ml灌流眼では網膜電図および網膜の組織学的所見で明らかな変化をきたさなかったことより、メルファランがこの濃度以下であれば、少なくとも網膜組織に対して重篤な影響を及ぼさないと推測される。しかし今後長期的な予後に関しての評価も必要とする。
|