インフォームドコンセントで同意の得られた健常人、白内障、緑内障、ぶどう膜炎患者の末梢血から、CD4^+またはCD8^+T細胞を分離した。また、同意の得られた炎症の既往のない老人性白内障患者から前房水を手術時に0.1mlほど採取し、同様に同意の得られた炎症の既往のない緑内障患者から繊維柱帯切除術で虹彩切除を行う時に切除された虹彩のみ採取した。human IPE(ヒト虹彩色素上皮細胞)は、虹彩組織を酵素処理し、約4-8週間特殊な培地で培養する事で樹立に成功した。上皮細胞かの確認のために、抗サイトケラチン抗体で染色したところ95%が陽性を示した。このhuman IPEはin vitroにおいて強い抑制能を示していた。このhuman IPEはT細胞の細胞増殖抑制や活性化T細胞の産生するIFNγサイトカイン抑制などの強い抑制能力を有していた。また、活動性ぶどう膜炎患者から樹立した眼局所由来T細胞クローンも有意に抑制していた。human IPEはin vitroにおいて抑制T細胞を誘導していた。別の抑制T細胞として、マウス眼色素上皮細胞由来の抑制T細胞を樹立した。C57BL/6マウスの脾臓からT細胞を採取し、マウス色素上皮細胞と共生培養し、X線をかけて抑制T細胞として使用した。このT細胞は別の活性化T細胞を有意に抑制し、Foxp3などの抑制T細胞マーカーを発現していた。このマウス抑制T細胞は実験的自己免疫ぶどう膜炎(眼内炎症)を抑制していた。以上の結果より、眼内レジデント細胞(眼色素上皮細胞など)やその眼特異的抑制T細胞は難治性の眼内炎症性疾患に臨床応用出来る可能性を示した。
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