ラット糖尿病白内障を補助により購入した50%ガラクトースを含んだ飼料を6週齢のSD系雄ラットに負荷して作製した。負荷後2週頃から水晶体の混濁と上皮細胞の多層化が観察された。経時的に試料(摘出された眼球から採取された水晶体嚢を含む上皮細胞)を採取し、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の蛋白、RNAレベルでの発現をELISA法、リアルタイムRT-PCR法においてそれぞれ解析した。その結果、蛋白、RNAレベルいずれにおいても、びまん性の細胞増殖が見られた時期にはbFGFの発現上昇は認めなかったが、上皮細胞の多層化が見られた時期に有意な発現の上昇が確認された。また、免疫組織染色により上皮細胞の多層化領域を含めbFGF蛋白に対する染色性が強まった事が示された。このbFGFの発現上昇は、アルドース還元酵素阻害剤(ARI)により抑制され、組織的にも上皮の多層化、および水晶体皮質の液化、崩壊は認めなかった。これらの結果から、bFGFの発現上昇が上皮細胞の多層化と関連があることが示唆された。糖白内障の再透明化においては、上皮細胞から皮質線維細胞への分化による供給が必要と考えられている。上皮細胞から線維細胞への分化をマーキング細胞の移動で観察したところ、コントロールと糖白内障群との間に差は無かった。糖白内障のARIによる再透明化は、分化した線維細胞の糖アルコールの蓄積による崩壊が抑制される為であることが明らかとなった。
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