ラットに対して光照射することにより光惹起性の網膜変性が起こる(網膜光傷害)。この網膜変性は、視細胞および網膜色素上皮細胞のアポトーシスにより、視機能に重篤な影響を与えるが、この変性の程度は系統により著明な違いが認められる。本研究では、これらの系統間のゲノム差に着目し、網膜光傷害に関連する遺伝子・染色体領域を探索・関連領域を狭めることで、網膜光傷害感受性/耐性遺伝子を追究していくことである。 そこで、まず、LEW系とWKY系ラットを識別できるSimple Sequence Length Polymorphism(SSLP)マーカーの選定を、Webデータベースhttp://rgd.mcw.edu/GENOMESCANNER/)などのデータを参考にして行った。平均184cR(約14cMに相当)おきにゲノムの組み換え状況が判断できるSSLPマーカーを識別し、且つ、SSLPマーカー長における系統間の差が8bp以上になるPCRプライマーという条件をもとに、現段階において242種類(121組)のPCRプライマーを選定した。現在、LEW系およびWKY系ラットの尾から抽出したゲノムDNAを用いて、これらのプライマーの最適なPCR条件や電気泳動条件について検討している。 この研究を円滑に進めるために、本学動物実験施設内に飼育室を1室用意し、そこでラットを繁殖、飼育することにした。また、その部屋に、モリス水迷路用の実験設備と光照射台を設置し、その部屋一室で全ての実験を行える研究体制を整えた。これにより、ラットの細菌感染対策が強化された。 ラットの繁殖状況は、WKY/Izm系とLEW/SsN slc系の雄雌ラット各1匹ずつによる交配を6組について行ったところ、現在、約50匹のF1ラットを出産するに至っており、さらにF1ラットの作成を行っている。これらのF1ラットからスクリーニングにより光感受性/耐性を判断し、その後、ゲノム解析を行いつつ、戻し交配へ繋げる予定である。
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