本研究では、網膜下の新生血管を抜去した際に付着していた網膜色素上皮細胞を初代培養し、生体で観察されるような一層の細胞に配列させて網膜色素上皮の欠損部位に移植することを目的としており、培養して増殖した細胞に磁性ナノ粒子を添加し磁気ラベルし、Tissue Engineering手法であるMag-TE法でシート状の単層の組織を構築する計画である。現在までの実験で得られた結果によると、磁性ナノ粒子を添加した細胞を磁力の存在下に培養すると、磁界の存在する領域に沿って細胞が増殖し、厚みが均一ではない局在の著しいシートが形成された。また、磁力を除去するとある程度広がりのあった培養シートが収縮し、塊状となった。 その改良方法として現在行っている実験では、細胞内に取り込む磁性ナノ粒子の量をさまざまに変化させて、磁力の存在下に形成される培養シートの形状を組織学的に確認している。また、別の方法として、コラーゲンシートを培地として、その上で磁性ナノ粒子で磁気ラベルした細胞を培養した後に、コラゲナーゼにてコラーゲン培地を分解し、磁気ラベルした培養シートを分離させ回収する、という実験も平行して行っている。ただ現在のところは培養シートの作製までは成功しているが、それが単層のシートとして作製されているか、これから組織学的に確認するところである。 また、培養されたシートを網膜下に移送する実験であるが、上記の培養で得られた磁気を帯びたシートを家兎の眼内にシート状のまま移送し、電磁石で引きつけるという実験を行うところである。
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