研究概要 |
発生中のラット網膜におけるタイトジャンクションを構成するタンパク質とアクアポリンの発現変化を調べるため,Sprague-Dawley系ラットを交配し,胎仔を得た。膣栓が確認出来た日の朝を胎生0.5日とした。16日,18日,20日目の胎仔および生後1日目,3日目の新生仔より眼球を採取して切片を作製し,免疫染色を行った。 ZO-1は外顆粒層および内顆粒層に点状に局在し,発生が進んで網膜細胞が増えるにつれ点状の陽性反応も増加した。また,未分化な視細胞外節にも強い反応が見られた。 Occldin-1の陽性反応は網膜細胞の分化が始まっていない胎生16日目では網膜全層に点状に局在していた。胎生18日目に外顆粒層と内顆粒層が形成されると、内顆粒層でより強い反応が見られるようになった。しかし,ZO-1で見られたような,視細胞外節部位の反応は観察されなかった。 水イオンチャネルであるアクアポリン-1は,眼杯唇部でのみ非常に強い反応が見られ,細胞の周囲を縁取るように局在していた。発生が進み,眼杯唇部から毛様体が形成され始めると反応は更に強くなり,出生後は毛様体上皮細胞に極めて強い反応が見られた。アクアポリン-4は胎生期および新生仔期の網膜では観察されなかった。 アクアポリン-1は成体の網膜では外顆粒層に,アクアポリン-4は主にミュラー細胞に局在していることがこれまでの研究で明らかとなっている。今回の結果より,網膜内でのアクアポリンの発現は,各細胞が分化して特徴的な機能を持つようになって以降の事であることが明らかとなった。また,網膜細胞の分化が生じる段階から発現していたZO-1とOccludin-1は,発生段階の網膜のホメオスタシス維持において主要な役割を担っている可能性があると考えられた。
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