研究概要 |
本年度は,自然に不死化したヒト結膜上皮細胞ラインIOBA-NHC細胞を用いて,以下に示すアレルギー炎症で放出されるTh2サイトカインの受容体の発現,またアレルギー炎症に重要な役割を果たすケモカインや接着分子の発現に対するこれらのサイトカインの作用を検討した。 1)flowcytometry法を用いて検討した結果,IOBA細胞は細胞表面にIL-4受容体α,IL-13受容体α1を発現していた。 2)IOBA細胞にIL-4およびIL-13を添加して一定時間培養した後細胞を溶解し,Western blotting法により転写因子であるSTAT6のリン酸化を検討した。その結果IL-4およびIL-13の刺激によりSTAT6がリン酸化された。 3)細胞表面の接着分子ICAM-1およびVCAM-1の発現をin situ cell ELISA法で検討した。IOBA細胞は恒常的にICAM-1を細胞表面に発現していた。TNF-αの刺激によりICAM-1の発現が促進されたが,IFN-γやIL-4,IL-13の刺激では発現に何ら影響はなかった。また,種々のサイトカインで刺激してもVCAM-1の発現は認められなかった。 4)ProinflammatoryサイトカインであるTNF-αやIL-1β,Th2サイトカインであるIL-4およびIL-13,Th1サイトカインであるIFN-γなどを単独あるいは組み合わせて刺激して培養上清中に放出されたケモカインの濃度を定量した。IOBA細胞はいずれのサイトカインの単独および同時刺激によってもeotaxinおよびTARCを産生しなかった。一方,IL-8は恒常的に産生され,TNF-αの刺激で促進された。このTNF-αの促進作用はステロイド剤の添加により抑制された。 これらの結果より,IOBA細胞にはIL-4/IL-13受容体は発現しており,これらのサイトカインによってSTAT6が活性化されることが明らかとなったが,その作用はいまだ不明である。またIOBA細胞は線維芽細胞とは異なり,アレルギー炎症に重要なケモカインeotaxinやTARC,接着分子VCAM-1は発現しないことが明らかとなった。さらにIOBA細胞は炎症性サイトカインによってIL-8を産生するが,この反応はステロイド剤によって制御可能であることが明らかとなった。
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