研究概要 |
平成18年度,眼球内部の状態に左右されない眼優位性定量装置を開発した。本装置はSynoptophore(Clement Clark International)に取り付けた1対のレチノメーター(LAMBDA100 Retinometer, HEINE社),Synoptophore(Clement Clark International),パーソナルコンピュータ,プリンタによって構成された。未屈折矯正下、被検者の優位眼と非優位眼の網膜に1対のレチノメーターを用いてハロゲン電球を光源とした45°と135°の格子縞(視野闘争刺激)を投影する。視野闘争刺激の空間周波数1.8c/deg(視力換算値0.06),サイズは5degである。優位眼刺激・非優位眼刺激がそれぞれ1分間で優位に知覚された時間(優位時間)を測定する。その際の優位眼と非優位眼の優位時間の差によって眼優位性の強さを評価する。本装置の実用性について健常被検者を対象に検討したところ,優位眼と非優位眼の優位時間の差によって眼優位性の強さを4段階(5秒以下、5秒以上10秒未満、10秒以上20秒未満、20秒以上)に評価できることが示された(研究発表#1)。 臨床応用として北里大学病院眼科を受診する白内障患者の眼優位性評価を行った。すべての患者において白内障の程度に関わらず視野闘争刺激が知覚された。眼優位性の強さは弱い群から順に優位時間差が5秒以下4名、5秒以上10秒未満2名、10秒以上20秒未満1名(20%)、20秒以上1名(10%)の4群に分けられた。本法は白内障眼の眼優位性定量評価を可能にした。今後,老眼矯正手術の有用なひとつであるモノビジョン法(優位眼を遠方矯正、非優位眼を近方矯正することで眼鏡不要になる)術前の眼優位性定量法または両眼視機能検査法としての有用性が示された(研究発表#1)。 平成19年度は北里大学病院眼科を受診している弱視患者を対象に弱視治療の経過とともに眼優位性定量を行い、弱視治療に伴う眼優位性の強さの変化について検討する。弱視治療による視力向上・低下より前に眼優位性の強さに変化を確認した後、弱視治療の効果判定法として検討する。
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