研究概要 |
平成19年度は18年度に開発した眼球内部の状態に左右されない眼優位定量装置を用いて北里大学病院眼科を受診している弱視患者を対象に弱視治療の経過とともに眼優位性定量を行い、弱視の眼優位性の強さに影響する因子について検討した。本検討は矯正視力1.0以上の不同視弱視の既往をもつ30名(平均年齢10.6歳)を対象とした。眼優位性の強さと治療開始年齢,治療開始時の患者視力,治療開始時の患者折度,治療開始時の不同視量の5項目の相関について検討した。弱視治療は全例が完全屈折矯正眼鏡装用とアイパッチによる時間遮蔽を施行した。眼優位性の評価は視野闘争時の各眼の自覚的視認時間を測定し,優位時間を解析する北里大式眼優位性定量装置を用いた。本装置はSynoptophore(Clement Clark Internatinal)に取り付けた1対のレチノメーター(LAMBDA100 Retinometer,HEINE社),パーソナルコンピュータ,プリンタによって構成された。未屈折矯正下、被検者の優位眼と非優位眼の網膜に1対レチノメーターを用いてハロゲン電球を光源とした45°と135°の格子縞(視野闘争刺激)を投影する。視野闘争刺激の空間周波数1.8c/deg(視力換算値0.06),サイズは5degである。その結果,眼優位性と治療時間時の年齢と治療終了時の年齢に正の相関を認めた。治療開始時年齢が高いと治療後の眼優位性が強い傾向を認めた。また治療終了時年齢が高いと治療後の眼優位性が強い傾向を認めた。 今回の対象症例は全て1.0以上の良好な視力を有する者である。しかしながら,眼優位性においては治療開始時期および治療終了時の年齢が高いと眼優位性が強いにとが示された。両眼視下での検査法である眼優位性定量評価法は単眼視下の視力検査よりも弱視による僅かな視機能異常を評価できることが推察される。弱視治療は早期発見,早期治療が大切である。眼優位性定量評価法は弱視治療の効果判定および,視力の低下を早期に防止するための指標としての有用であると考える。 平成20年度は弱視治療の経過とともに眼優位性定量を行い、弱視治量に伴う眼優位性の強さの変化について検討する。また同時に検査装置の小型化・を目指し装置の改良を継続して行う。
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