研究概要 |
TNF-α硝子体注射により、有意な視神経軸索数の減少(約30%減少)が2週間後より認められた。一方細胞体である神経節細胞の減少は硝子体注射後2ヶ月で有意となった。このようにTNF-α硝子体注射は視神経障害が細胞体死より先行することが確認された。また、TNF-α硝子体注射により視神経においてNF-κBp65の上昇が認められ、それらは免疫組織化学染色でマイクログリアと共存していた。しかしながら網膜においてはNF-κBp65の有意な変化は認められなかった。NF-κBp65のアンチセンスオリゴヌクレオチド(AS ODN)を硝子体注射することにより、TNF-αによる視神経軸索数の減少は有意に抑制された。このことによりTNF-α誘発視神経障害において、NF-κBp65は軸索障害に関与していると考えられた(IOVS,2006)。さらにTNF-αの下流因子として、IL-1βに注目しNF-κBp65の下流にあるかどうか、NMDA神経節細胞障害でまずは検討した。NF-κBp65AS ODNによりIL-1βmRNAと蛋白が抑制され、IL-1βは神経節細胞死し関与していることが示唆された(Brain Res,2007)。TNF-α誘発視神経障害において神経栄養因子であるBDNFおよびNGFは網膜、視神経ともに変化を認めなかったが、それぞれの受容体であるtrkBとp75mRNAが視神経において減少し、網膜では変化を認めないことを報告した(第26回日本眼薬理学会)。TNF-αの受容体の変化としては、視神経ではTNF-R1mRNAは上昇しTNF-R2mRNAは減少していた。しかし網膜ではそれらの変化に有意差を認めなかったことを報告した(第26回日本眼薬理学会シンポジウム)。エストロゲンの神経節細胞保護効果にextracellular signal-regulated kinaseが関与していることを報告し(J Neurosci Res,2007)、そのTNF-α誘発視神経障害での効果を2007年5月のARVO meetingで発表予定である。
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