ジアゾキサイド(diazoxide)の神経保護作用 背景:ジアゾキサイドはミトコンドリア内膜に存在するATP感受性カリウムチャンネルを開放する薬剤で、心臓などの眼以外の臓器において保護作用を持つことが報告されている。眼科領城ではこれまでin vitroでの効果が報告されているが、in vivoでの神経保護作用に関する報告はまだない。昨年度の研究で、家兎ヘジアゾキサイドを硝子体注入することによって、N-methyl-D-asparate(NMDA)による神経障害の回復を促進させ、神経保護作用を持つことが示唆された。目的:人により近い、サルを用いて、家兎と同様にN-methyl-D-asparate(NMDA)硝子体注入による網膜内層障害モデルを作成し、ジアゾキサイドのin vivoでの神経保護効果について検討した。方法:ジアゾキサイド(200nmol)もしくは溶媒をサルの硝子体に注入後NMDA(1μmol)を注入し、視機能変化を視覚誘発電位(VEP)と網膜電図(ERG)をNMDA投与の2週に測定した。組織切片を作成し、神経節細胞層の細胞数を比較した。結果:NMDAにより投与2週間後のVEP振幅は減弱するが、ジアゾキサイドの併用によりVEP振幅の回復が促進され、平均振幅は併用しない場合の約1.3倍となった。ERGには両群とも有意な変化を認めなかった。神経節細胞の細胞数は、正常対照に比べNMDAにより20%以下に減少するが、ジアゾキサイドの併用により30%程度に減少するのみとなった。結論:ジアゾキサイドは家兎だけではなくサルにおいても、NMDAによる神経障害の回復を促進させ、神経保護作用を持つことが示唆された。
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