我々は平成18年度の研究において、p21と同樣にRho Kinase シグナル系に属し、さらに最近in vitroにおいてシュワン細胞のミエリン化に関わっている事が報告されているp75遺伝子に着目した。この働きをin vivoにおいて解析する目的で、p75欠損マウスより採取したシュワン細胞を同種移植したモデルを作成し、それら同種移植マウスの機能的及び組織形態学的回復を評価した。まず移植神経内におけるシュワン細胞の数を抗S100抗体による免疫染色にて評価したところ、p75欠損神経とコントロール神経間に有意な差を認めなかった。この結果より、移植時における移植神経内シュワン細胞数はp75欠損神経移植群、コントロール群において同等であると考えた。75欠損移植神経群における移植神経内再生軸索数の評価ではp75欠損神経移植群、コントロール群の間において有意差を認めなかった。しかしながら、平均軸索径及びミエリシの厚さにおいてはp7S欠損神経において有意に小さい値を示した。またこれらの結果を裏付けるように、神経伝導速度の評価においてもp75欠損神経移植群においてコントロール群と比してその回復は有意に阻害された。また、足跡分析による坐骨神経機能評価(SFI)においても同様にp75欠損神経移植群においてその回復が有意に阻害された。これらの結果よりシュワン細胞におけるp75遺伝子は、軸索径やミエリンの厚みの増大、すなわち再生軸索の成熟に関わっている可能性が示唆された。
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