末梢神経損傷後、中枢・末梢側断端よりシュワン細胞(以下SC)が増殖・遊走しビュングナー帯を形成、それらをガイダンスとして軸索再生することが知られているが、脱分化したSCが増殖・遊走能を獲得するにはある程度の期間が必要となる。この期間を短縮できれば神経断端間に速やかにビュングナー帯が形成され、軸索が早期かつ正確に伸長するのではないかと我々は考えている。今回SC遊走能を向上させる試みとしてnerve predegenerationに着目し、そのSC数・遊走能変化を検討した。 ラット坐骨神経を予め切断し、末梢側をワーラー変性させたpredegenerated graft(以下PG)を作成。変性期間は0〜56日とした。PGより採取したexplants assayによりSC遊走能をin vitroで評価した。さらにSC特異的蛍光蛋白発現マウスにおいて同様にPGを作成、野生型マウスへ同種移植し、ホストへのSC遊走能をin vivoで観察した。最後に抗F4/80抗体染色にて体循環よりPG神経内膜内へ侵入したマクロファージ数の変化を評価した。in vitroにおけるPG内SC遊走能は7、14日目において0日目より有意に高い値を示した後、28日目では減少し、56日目ではほぼ0となった。in vivoにおける評価では14日目にピークに達した後、28日目以降は徐々に減弱していった。0日目において殆ど見られなかった神経内膜内マクロファージ数は、7日目に劇的に増加した後、56日目には有意に減少した。PG内SCは高い遊走能を獲得することが明らかとなり、その一部は体循環より神経内膜内へ侵入するマクロファージにより制御されている可能性が考えられた。また、末梢神経損傷後再建においてnerve predegeneration及び活性化マクロファージの有用性が示唆された。
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