末梢神経が損傷を受け、その再生までに長い期間を要した場合、その支配筋の萎縮が問題となる。神経の損傷部位より末梢側の側面に他の運動神経を端側縫合付加することによる支配筋の機能回復促進効果をラット坐骨神経モデルを用いて検討した。 SDラット12匹を用いた。すべてのラットで左側の坐骨神経を末梢で切断し坐骨結節まで剥離、挙上し、末梢端を背部の皮下トンネルを通して右側に移行した。次に、右側の坐骨神経を坐骨結節付近で切断した後に端端縫合をおこなった。I群は左の坐骨神経を皮下トンネル内に留置したのみとし、II群は右側坐骨神経の端端縫合より約20mm末梢の側面に左側からの坐骨神経断端を端側縫合した。術後5日毎の知覚検査、術後90日の電気生理学的検査、坐骨神経刺激による筋収縮力、筋重量測定、神経断面の形態学的評価、逆行性神経トレーサー等を用いて各群の回復を比較・検討した。 知覚検査では術後30日以降でII群においてI群より有意に優れた回復が認められた。術後90日での電気生理学的検査、筋収縮力、筋重量、組織学的検査においてもII群がI群に対して有意に優れた回復を示した。逆行性神経トレーサーによる軸索の連続性の評価ではII群において、支配組織は両側の坐骨神経から二重支配を受けていることが確認できた。 端々縫合部より末梢に他の神経の端側縫合を付加することで、その支配筋ならびに知覚の回復が促進された。支配筋への再生軸索の増加などによるneural inputの増加がその主な理由として考えられるが、この術式では一つの筋が由来の異なる神経により二重支配を受けることになる。今後は二重支配における優位性の因子や二期的な端側縫合付加の効果、長期にわたる機能回復の検討を予定としている。
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