研究概要 |
我々はラット坐骨神経モデルにおいて神経端側縫合付加が末梢神経損傷後の機能回復(知覚筋力)を促進することを報告した(J Neurosurg2007 107 821-829)。末梢神経は損傷後の再生期において種々の神経関連因子に影響を受けながら成長円錐を伸長させていく。我々の坐骨神経モデルにおいて端側縫合付加する神経がレシピエントへ伸長する際にも種々の神経連因子に影響を受ける。末梢神経再生における神経関連因子の役割を解析することで目的織の機能回復をさらに促進する治療薬の開発につながる。今回、神経関連因子のSlitに注した。Slit familyは反発性の神経軸索ガイダンス因子の一つであるが、末梢神経における役割や機能はまだ不明な点が多い。今回我々は末梢神経損傷後の再生におけるSlit familyの発現の経時的変化を調査した。 方法:8週齢、雄のラットの顔面神経本幹を左側は切断し、右側は露出のみとした。術後1,3,5,7,14,28日目において顔面神経核におけるSlit1,-2,-3 mRNAの発現の変化をin situ hybridization法を用いて評価した。またcounterstainにてmRNAの発現している細胞を調べた。 結果:Slit1は損傷側の顔面神経核内の神細胞体において術後5日から28日目まで発現力贈加していた。Slit2は損傷側顔面神経核内の神経細胞体において術1日目から7日目まで発現が減少していた。Slit3は神経細胞において発現していたが、損傷による発現の変化は認めなかった。 考察:Slit familyは発生期の成長円錐にligandとして作用する。今回、末梢神経再生時において神経細胞の内因性のSlit familyの発現がそれぞれ変化し、末梢神経再生に関与することが示唆された。今後、神経細胞に内因性のSlit familyの機能解析をしていく予定である。
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