研究概要 |
遠心分離操作が吸引脂肪組織に対して与える影響を、vivo、vitro実験系で検討し、吸引脂肪移植術において、脂肪細胞の生着率向上のために最適と考えられる遠心条件を分析した。4症例から得られた脂肪吸引内容物を分注し15分間静置後、それぞれ400g,700g,1200g,3000g,4200gで3分間遠心し、遠心操作を行わない場合と比較検討した。脂肪層・油液層・液体層の量、脂肪層の比重、各層に含まれる赤血球数、脂肪層から採取される脂肪由来幹細胞(ASC)数を測定した。さらに走査電顕による脂肪組織の形態観察を行った。遠心力があがるに従い、脂肪層は減少(70.4±4.9〜58.2±3.2%)、液体層(22.9±6.5〜30.7±5.6%)、油液層(6.7±8.1〜11.2±6.9%)は増加する傾向があった。脂肪層の比重は低くなっていく傾向があった。脂肪層内の赤血球数は減少(9.51±2.6〜7.0±4.0×109)、液体層丙の赤血球数(1.3±1.1〜1.6±1.2×109)は増加する傾向があった。脂肪由来幹細胞数は1200gを超えると減少した。走査電顕では、遠心力増大に従い脂肪細胞が濃縮されるが、同時に破壊脂肪細胞も増加することが観察された。 遠心分離の目的は、一義的には(1)脂肪組織を濃縮化(体積比生着率の増加)するとともに、(2)血球成分を排除する、ことにある。遠心力に応じて上記の目的は達成されるが、過度に強い遠心力がかかることにより脂肪組織及び脂肪由来幹細胞が破壊され移植した際の生着率が低下するおそれがある。今回得られた結果から400〜1200g程度の遠心力で遠心分離を行うことにより、より高い生着率を得られる可能性が示唆された。
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