研究概要 |
当救命センター入院となったクモ膜下出血患者で,治療のために髄液ドレナージチューブを挿入された患者のうち、38名においてドレナージチューブから髄液を経時的に採取した。患者背景、既往歴、重症度、臨床経過について検討を行い高齢者、血腫や脳梗塞を伴った患者、重篤な既往歴を持つ患者、重篤な合併症を伴っている患者、死亡例は除外し、スパズムを伴った患者4例、スパズムを伴わなかった患者9例を同定した。また,コントロールとして神経学的に問題のない患者13例が腰椎麻酔を受ける際に髄液を採取した。これらの髄液の蛋白定量、SDS-PAGEを行ったところコントロール群とクモ膜下出血患者では蛋白量に10倍程度の差が認められた。そのため、くも膜下出血患者とコントロール群での比較では目的となる蛋白の同定は困難と判断した。当研究室の質量分析では数百もの蛋白が同定できるため、より効率的に目的となる蛋白を同定する方法を検討した。その方法として(1)一度の質量分析で4検体の蛋白同定、半定量が可能であるiTRAQを用いる(2)スパズムは起こりやすい時期があり、髄液中の蛋白もスパズム前に大きく変化していると考えられるため、スパズム例においてスパズム発現前の数日間の検体で測定を行う(3)個人間の差をなくすため同一例の検体において測定を行うこととした。前述のスパズムを伴った患者4例のなかから最も蛋白量の経時的変動が小さかった症例を選び、検体の前処理、iTRAQ標識を行った。現在、質量分析装置(ESI+Q-TOF)にかけ、質量分析データからデータベース検索(MASCOT)により蛋白質を同定する準備中である。
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