【平成18年度の目的】 敗血症の致死性に深く関係している因子HMGB1の作用機序について、個体レベル、分子レベルで解明すること。その中でも特に、HMGB1が血液凝固系に及ぼす影響について解明する。 【平成18年度の研究計画】 (1-1)HMGB1が血液凝固時間に及ぼす影響を試験管内で検討する。 (1-2)HMGB1が血管内皮培養細胞および血球細胞に及ぼす影響を検討する。 (1-3)HMGB1が抗凝固経路に及ぼす影響について試験管内で検討する。 (2-1)トロンビン誘発DICモデルラットにおいて、HMGB1が生存率に及ぼす影響を検討する。 (2-2)トロンビン誘発DICモデルラットにおいて、HMGB1が血管内血栓形成に及ぼす影響を検討する。 (2-3)トロンビン誘発DICモデルラットにおいて、HMGB1が血液凝固検査所見に及ぼす影響を検討する。 【平成18年度の研究成果】 (1-1)試験管内でHMGB1を添加しても、プロトロンビン時間、トロンビン時間ともに変化しなかった。 (1-2)HMGB1は単球表面の組織因子発現量を増加させた。 (1-3)トロンビン・トロンボモジュリンがプロテインCを活性化する反応に対して、HMGB1は抑制的に働いた。 (2-1)HMGB1は単独では致死活性を示さなかったが、トロンビンによる致死閾値を低下させた。 (2-2)HMGB1単独では血管内血栓形成は全く認められなかったが、トロンビンによる血栓形成を著明に増強した。 (2-3)HMGB1単独では血液凝固検査に全く影響しなかったが、トロンビンによる凝固因子消費を増強した。 以上より、HMGB1は単独では血液凝固活性も致死活性も示さなかったが、トロンビン・トロンボモジュリン複合体によるプロテインCの活性化を抑制することによって、凝固反応を加速させ、致死的に働いていることが示唆された。
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