研究概要 |
細胞膜カベオラの構造タンパクであるカベオリンにはカベオリン-1, -2, -3の3つのサブタイプが存在する.多くの細胞に存在するカベオリン-1, -2に対し, カベオリン-3は筋線維に特異的に存在している.私は一昨年度までに顎関節滑膜の滑膜表層細胞のうち, 線維芽細胞様B型細胞のカベオラにこれら3つのカベオリンが局在することを明らかにし, 昨年はカベオリン-3がB型細胞の増殖ではなく, 分化に関与している可能性を示唆する発生学的所見を得た.この線維芽細胞様B型細胞はリウマチ性関節炎などでみられる骨破壊性のパンヌス形成時に増殖することが知られ, その際, 筋線維芽細胞の特徴を有するように変化することが報告されている. B型細胞はその重要性にもかかわらず, 正常微細構造および由来すら明らかにされていない.今年度はカベオリン-3を発現するB型細胞の微細構造学的検索および, 筋線維への分化開始を調節するタンパクであるデスミンとともに昨年度も試みたが検出されなかった一酸化窒素合成酵素(nitric oxide synthase ; NOS)の局在をラット顎関節滑膜において免疫細胞化学的手法にて検索した結果, 以下のような所見を得た. 正常ラット顎関節滑膜表層細胞において, NOSのすべてのサブタイプ(血管型eNOS・神経型nNOS・誘導型iNOS)の発現を異なる抗体で再検索したが検出されなかったことから, 過去の報告のようにB型細胞のカベオリン-1がNOSの発現を抑制している可能性が示唆された.一方, 成熟ラット顎関節滑膜表層にデスミン免疫陽性反応が局在することを光顕レベルで発見した.デスミン陽性細胞およびB型細胞のマーカーであるHSP25陽性細胞はカベオリン-3免疫陽性細胞に比べて数が多い傾向にあった.このことからカベオリン-3はある一定の分化段階のB型細胞のみを標識していることが明らかとなった.
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