1.in situハイブリダイゼーション法およびRT-PCR法を用いてマウス脊髄損傷後のニューロプシンmRNAの発現を検討した。その結果、損傷後4日をピークに主に脊髄白質で発現が増加することが明らかとなった。またin situハイブリダイゼーション法と細胞マーカーの免疫組織化学との2重染色により、ニューロプシンmRNAの発現細胞はオリゴデンドロサイトであることが明らかとなった。 2.脊髄損傷後に発現が増加するニューロプシンの機能を検討するため、ニューロプシン遺伝子欠損マウスと野生型マウスに同様の脊髄損傷を行い、組織学的および行動学的評価を行った。まずMBPの免疫組織化学および電子顕微鏡による観察により、ニューロプシン遺伝子欠損マウスでは野生型マウスと比較して脊髄損傷後の脱髄および軸索変性が抑制されることが明らかとなった。 3.TUNEL法と細胞マーカーの免疫組織化学との2重染色により、脊髄損傷後に損傷部位周囲のオリゴデンドロサイトに細胞死が起っていることが明らかとなった。TUNEL陽性細胞数および生存しているオリゴデンドロサイトの細胞数を計測したところ、ニューロプシン遺伝子欠損マウスでは野生型マウスと比較してオリゴデンドロサイトの細胞死が抑制されることが明らかとなった。 4.神経トレーサー(BDA : biotinylated dextran amine)を用いた実験でニューロプシン遺伝子欠損マウスでは脊髄損傷後に起こる皮質脊髄路の障害が野生型マウスと比較して抑制されることが明らかとなった。 5.行動学的評価において、ニューロプシン遺伝子欠損マウスでは脊髄損傷後の歩行能力とバランス維持能力の障害の程度が野生型マウスと比較して抑制されることが明らかとなった。 これらの研究成果は本年度の北米神経科学会(ジョージア州アトランタ)にて発表した。
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