研究概要 |
ATPの加水分解によりピロリン酸を産生し、石灰化調節に関わっている酵素であるPC-1遺伝子に異常を有するマウス実験動物であるtiptoe walkingマウスより歯根膜細胞を採取UPC-1遺伝子に異常を有するマウス歯根膜細胞を樹立した。マウス実験動物から作成したHE染色標本での観察では、PC-1野生型と異常型の歯根膜部の形態に明らかな組織学的な違いは見いだされなかった。しかしながらセメント質部の比較ではPC-1異常型のマウスにセメント質の著明な肥厚が観察された。樹立した培養細胞を、位相差顕微鏡を用いて検索したところ、PC-1野生型マウスの歯根膜細胞は、線維芽細胞に特徴的な紡錘形の形態を示していた。一方でPC-1異常型マウスの歯根膜細胞は、骨芽細胞やセメント芽細胞に特徴的な立方状の形態を示していた。 PC-1野生型と異常型の歯根膜細胞の細胞増殖能を検索したところ、培養4日目までは同様な増殖能を示していたが、培養6日目ではPC-1異常型マウスの歯根膜細胞はPC-1野生型マウスの歯根膜の1.8倍の増殖能を示した。さらにその傾向は10日目まで継続し、10日目ではPC-1異常型マウス歯根膜細胞はPC-1野生型の2倍の細胞増殖能を示した。 次にアルカリフォスファターゼ活性をPC-1野生型と異常型で比較検討したところ、PC-1異常型歯根膜細胞は、野生型に比較して、4,8,12日でそれぞれ7.1,7.8,9.8倍の活性を示した。 またRNAを抽出しPCR法を用いて骨基質タンパク質である骨シアロタンパク質とオステオカルシンタンパク質の発現を検索したところ、PC-1異常型歯根膜細胞はPC-1野生型歯根膜よりも高い骨シアロタンパク質発現を示した。一方で、オステオカルシンタンパク質の発現には違いが認められなかった。
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