研究概要 |
骨代謝および幹細胞ニッチにおけるエストロゲンの役割を明らかにするために、まず鳥類の骨髄骨を用いて、以下の実験を行った。 1)成熟雄ウズラにエストロゲン(E2)を単回投与し、骨髄骨の形成期(投与後3,2,1)における骨髄細胞を培養した。その結果、投与後3日、すなわち骨形成が非常に盛んである時期に破骨細胞の指標である酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)陽性の多核(3核以上)の破骨細胞様細胞が形成された。このことから、骨形成が進むに連れ、破骨細胞の前駆細胞が骨髄中で増加することが示唆された。 2)上記の実験において、培地中に破骨細胞の誘導因子であるRANKLおよびM-CSFを添加すると、同様に投与後3日の破骨細胞様細胞では、TRAP強陽性の多核の細胞が形成された。投与後0,1および2日の骨髄細胞においても同様の細胞は多数見られたが、細胞の大きさは投与後3日の細胞に比べ、非常に小さいものであった。以上のことから、破骨細胞の分化には骨芽細胞および他の骨髄細胞の関与があると示唆された。 3)上記の実験モデルを用い、これらの細胞に骨吸収能を検討した結果、RANKLおよびM-CSFの無添加の細胞には、ほとんど吸収窩は見られなかった。しかしながら、RANKLおよびM-CSFを添加した細胞では吸収窩が認められた。さらに、投与後3日の細胞は、他の細胞に比べ、非常に多数の吸収窩が認められた。このことから、骨形成が進むに連れ、骨吸収能を持つ細胞が増加することが示唆された。 以上の結果から、エストロゲン投与により、骨髄骨が盛んに形成されている中で、破骨細胞の前駆細胞あるいはその幹細胞が分化し、骨吸収を始める準備をしていることが示唆された。また、骨形成を始めた骨芽細胞と造血系幹細胞との相互関係であるニッチの存在が考えられる。来年後は以上のことをさらに追求し、哺乳動物の骨代謝についても同様に検討する。
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