本研究の目的はオカダ酸誘導アポトーシスにおけるPKRとNF-κBとIκBの役割を明らかとする事である。オカダ酸誘導アポトーシスの機序についてNF-κBとIκBリン酸化の点より検討を加え、ヒト骨芽細胞にキナーゼ不活型変異PKRを遺伝子導入し、骨芽細胞のオカダ酸やLPS等によるアポトーシス誘導に変化が生じるか調べた。 1.骨芽細胞をオカダ酸により処理するとNF-κB転写活性が上昇し、NF-κBとIκBがリン酸化されそのリン酸化部位はNF-KBの536番目セリン残基とIκBのチロシン残基であることを明らかとした。これらの結果の一部はJ Cell Biochem誌およびMole Cell Biochem誌に発表し、残りの結果については現在論文投稿中である。 2.PKR変異骨芽細胞を樹立した。変異細胞ではオカダ酸によるIκBのリン酸化残基が異なること、LPSや細菌抽出物によるアポトーシス誘導が異なることを明らかとした。また線維芽細胞においてLPS処理によりPTENの発現やAktのリン酸化が変化することも明らかとした。これら結果ついてはMole Cell Biochem誌に発表し、Cell Biol Int誌において現在印刷中である。また残りの結果については現在論文準備中である。 3.細胞周期を停止させるとPP1の発現量が変化し、核小体形態や核内蛋白にも変化が生じることを明らかとし、Cell Biochem Funct誌において現在印刷中である。 以上に示すように、現在までにNF-κB、IκBとアポトーシスとの相互関係を明らかとし、リン酸化調節を受ける部位についても明らかとする結果を得ている。また、PKR変異細胞におけるアポトーシス誘導機序の違いやLPSによる影響等についても明らかとした。こうした事より骨芽細胞においてアポトーシスの進行にNF-κBとIκBのリン酸化やPKRが深く関わっている事を解明する事が出来た。
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