破骨細胞は骨組織のリモデリングに対して大きな役割を果たしている多核の単球・マクロファージ系由来の細胞である。破骨細胞の分化時また活性化時においてどのようなシグナルが動くか、ということについてはこの数年で非常に多くのことが分かってきた。しかし、それらシグナルがどのように制御されているかについては未知の部分が多く残されている。本研究ではln vitroで骨髄細胞から破骨細胞を分化させる系を用いて、経時的にRNAおよびタンパク質を回収して解析を行った。 その結果、ラフトの裏打ちタンパク質であるCaveolin-1はRANKL刺激によって誘導されることが明らかになった。siRNAによってCaveolin-1のノックダウンを行った結果、破骨細胞形成の抑制が見られた。コレステロールがラフトに多く含まれていることから、血清中のコレステロール除去実験を行ったところ破骨細胞形成は抑制され、このことからもラフトが分化後の機能のみならず分化時のシグナルにも影響を与えることが推測された。現在Caveolin-1ノックアウトマウスからの骨髄細胞を用いての解析や、また、どのようなシグナルが影響を受けているかについての検討を行おうとしている。 本年度は上記研究以外に初期発生におけるPGC7/Stellaの機能解析を行った。その結果、PGC7/Stellaは核移行キャリアタンパク質RanBP5と結合すること、非特異的なRNAおよびDNA結合能があることを明らかにした。さらに、受精直後きわめて早い段階においてPGC7/Stellaが核内に移行し、母方由来ゲノムの脱メチル化からの保護を行っていることが明らかになった。つまりPGC7/Stellaはepigeneticasymmetryの成立に必須であることが明らかになった。この研究結果はNature Cell Biologyに掲載された。
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