歯周疾患関連細菌として最も有力視されているPorphyromonas gingivalisのUniversal stress protein(Usp)は、さまざまな環境ストレスに対し防御作用の役割を担っていることが推測される。そこで、Porphyromonas gingivalisにおけるusp遺伝子挿入変異株の作成を行い、Porphyromonas gingivalisのストレス回避機構において、Uspがどの程度の重要性を占めているか解析することにした。最初に、Usp遺伝子をP.gingivalis ATCC 33277株及びW83株のゲノムをもとにクローニングを行った。その結果、uspのopen reading frame内塩基配列を比較したところ、ATCC 33277株とW83株では6塩基に相違が認められたが、すべて同義置換であった。その後、目的遺伝子内にエリスロマイシンカセットを挿入しターゲッティングベクターを得た。次に、エレクトロポレーターによりターゲッティングベクターをP.gingivalis ATCC 33277株とW83株に導入し、相同組換えを起こさせることにより変異株を作製した。サザンハイブリダイゼーション法にてuspのopen reading frame内にエリスロマイシンカセットが挿入されていることを確認した。野生株、usp変異株を用い嫌気培養下において増殖曲線を測定したが、両株に違いはなかった。よって、嫌気培養下の増殖において、Universal stress proteinはあまり関与していないことが示唆された。また、静止期から死滅期における生菌数の変化を測定したところ、静止期に入り4日後まで野生株とusp変異株で差は認められなかったが、6日後ではusp変異株の生菌数は野生株より減少していた。よって、Uspは静止期から死滅期における菌の生存に関与していることが示唆された。
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