研究概要 |
歯周疾患関連細菌として最も有力視されているPorphyromonas gingivalisのUniversal stressprotein(Usp)は、さまざまな環境ストレスに対し防御作用の役割を担っていることが推測される。前年度は、Uspが静止期から死滅期における菌の生存に関与している可能性をUsp変異株を作製し、生菌数測定法にて解析、報告した。そこで今年度は、静止期初期の全タンパクの発現を二次元ゲル電気泳動法にて展開し、野生株とUsp変異株の展開パターンを比較検討したところ、いくつかのタンパクの発現に差が認められた。また、Uspが関与する他のストレス因子候補として酸化ストレスについて解析を試みた。ディスク法による感受性試験を過酸化水素、diamideを用い行ったところ、野生株と同程度の感受性を示した。この結果、Uspは酸化ストレスに関しては重要な働きを行っていないと推測された。また、Rgp, Kgp活性を測定したところ、Usp変異株は野生株に比べKgp活性は少し増加し、Rgp活性は少し減少している結果となった。また、赤血球凝集能に関しては、野生株とUsp変異株に顕著な差は認められなかった。以上の結果より、Porphyromonas gingivalisにおけるUspの役割は、静止期における生存に大きく貢献していることであると推測される。海外の研究グループがPorphyromonas gingivalisのUspはバイオフィルムの形成に関与しているとの報告がなされていることを考え合わせると、今回の実験結果はその可能性を裏付け、さらなる発展に寄与できると思われる。
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