研究課題
Porphyromonas gingivalisが産生するプロテアーゼgingipainは、歯周病の病態形成に大きく関与すると考えられている。Gingipainは凝固因子の活性化とともに抗凝固因子の不活化を引き起こすため、総じて血液凝固の亢進にも関与する。このようなgingipainの血液凝固亢進活性は虚血性心疾患のリスクファクターとしての歯周病の分子機序の一つと考えられる。一方、血管内皮細胞にはWeibel-Palade小体(WPB)と呼ばれる、von Willebrand factor(VWF)、P-selectin、angiopoetin-2(Ang-2)などの分子を含む分泌顆粒が存在する。WPBのエキソサイトーシスは血管内腔に分泌されるVWFあるいはP-selectinを介して血小板の接着と凝集、白血球のローリングを誘導し、炎症のトリガーとなる。本研究では、gingipainによるWPBのエキソサイトーシスの誘導、さらにこのプロセスにおけるチオレドキシンの関与を調べ、P.gingivalisと血管の炎症との関連を検討した。Gingipainはプロテアーゼ活性に依存的にWPBエキソサイトーシスを誘導した。Gingipainによるエキソサイトーシスはprotease-activated receptor(PAR)1、2ならびに3によって仲介されており、さらにPLCγと細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が大きく関与していた。また、WPBの成分であるAng-2はP.gingivalis LPSが誘導するIL-8産生を増強した。しかしながら、チオレドキシンはこれらすべての細胞応答を強力に抑制することが分かった。以上の結果から、血管内皮細胞においてP.gingivalisあるいはgingipainが誘導する初期の炎症性応答はチオレドキシンの存在によって抑制性に制御されていることが分かった。
すべて 2007 2006
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