研究概要 |
増殖因子前駆体等を活性化するサチライシン様前駆体蛋白質変換酵素PACE4の活性や発現を阻害剤,特異抗体,siRNA当で抑制することで培養ラット顎下腺の分枝形成が抑制され、腺房細胞の増殖・分化が抑制された結果、唾液分泌に関わる水チャネルAQP5の発現が減少した(Akamatsu. et. al.投稿論文修正中)。ヒト唾液腺介在部導管細胞より樹立されたHSG細胞は、培養条件により腺房細胞に分化することが報告されている。分化誘導前HSG細胞ではPACE4とAQP5の発現は殆ど認められないこと、また、PACE4の発現抑制に関わると考えられるbHLH型転写因子Sgn1(Mash5)が発現することを見い出した。HSG細胞はラミニンコート下で培養すると腺房細胞に分化するとのことであるが、同様の分化誘導は認められず、人工マトリゲルMebiol gelにて培養したところ、経時的に球形状の腺房様の構造が形成された。培養開始1,3,5日目に全RNAを精製し、PACE4当の発現を解析した結果、PACE4とAQP5の発現が経時的に増加することが示唆され、興味深いことに、PACE4の発現誘導に関わると考えられるbHLH型転写因子Mist1の発現も増加傾向にあることが示唆された。Mist1は膵臓腺房細胞分化過程で重要な役割を果すことが報告されている。従って、唾液腺腺房細胞分化・成熟過程ではMist1を介したPACE4の発現誘導が起こり、分化に伴いAQP5の発現は誘導される可能性が示唆された。しかし、予想に反して依然Sgn1の発現も認められ、観察の結果、導管様の構造も形成されていた。学会での情報収集の結果、HSG細胞株は複数の細胞種を含むとのことから、急遽、限界希釈法によりHSG細胞の再クローニングを行った。今後、得られた複数のHSGクローン株を用いて腺房細胞分化誘導の詳細な分子機構を解析する。
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