研究概要 |
レプチンの骨代謝調節作用の一端は、1,25(OH)2D3によるカルシウム代謝調節を介したものであると考えられた。そこで本研究では、レプチンが、腎臓の近位尿細管に特異的に存在する1α-水酸化酵素の遺伝子発現を抑制する詳細なメカニズムの解明を試みた。まず、レプチンの作用がレプチン受容体を介しているかを検索するために、活性型レプチン受容体(Ob-Rb)の異常により糖尿病を発症するマウス(db/dbマウス)を用いて、レプチン投与による1α-水酸化酵素遺伝子発現及び血中の1,25(OH)2D3レベルの変動を調べた。雄C57BL/6J ob/obマウスおよびdb/dbマウスに、Vehicleもしくはレプチン4mg/kg b.w.を12時間おきに1日2回2日間腹腔内投与した。ob/obマウス、db/dbマウス共に、血清カルシウム、1,25(OH)2D3の有意な上昇が見られた。腎臓での1α-水酸化酵素発現の上昇が認められた。ob/obマウスへの高濃度レプチン投与により、血清カルシウム及びリンは正常マウス群のレベルにまで低下した。血清1,25(OH)2D3は、レプチン投与により有意に低下した。腎臓での1α-水酸化酵素発現はレプチン投与により有意に低下した。これに対し、db/dbマウスへのレプチン投与では、血清カルシウム、リン、1,25(OH)2D3に変化はみられなかった。腎臓での1α-水酸化酵素発現もレプチン投与による変化はなかった。 次に、腎の初代培養系を確立した。腎の初代培養細胞における1α-水酸化酵素および24-水酸化酵素の発現を確認したところ、両酵素の遺伝子発現が確認された。今後は、レプチンが近位尿細管に直接作用することを確認し、1α-水酸化酵素発現抑制についてのシグナルトランスダクション経路の解明を目指す予定である。
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