以前、造血を支持する骨芽細胞が破骨細胞前駆細胞も支持するという仮説をたてた。In vitroにおける破骨細胞分化では、細胞周期の停止したpOCP(post-mitotic osteoclast precursors、増殖後破骨細胞前駆細胞)を介して分化することを明らかにした。平成19年度は、pOCPから破骨細胞への分化機構を解析することを目的とし、本研究を計画した。実験計画は、以下のテーマを明らかにすることを目標とし、遂行した。(計画 1)前駆細胞から破骨細胞分化期間の解析:E-GFPを発現するマウスを用いて実験を試みたが、蛍光強度の減弱などにより、解析が困難であった。現在、全身性にβガラクトシダーゼを発現する ROSA26マウスを用いて実験系の構築中である。(計画 2)QuOPの局在の解析:QuOPマーカーは、RANK^+、c-Fms^+、Ki6767^-(増殖マーカー)、TRAP^-である。そこで、破骨細胞が存在しないRANKL欠損マウスを用いてQuOPの局在解析を試みた。(1)RANKL欠損マウスの脛骨は、骨量の上昇を呈し、TRAP陽性細胞は認められない。(2)RANKL欠損マウスにおいて、骨組織に沿った場所にのみRANK、c-Fmsダブル陽性細胞(QuOPs)が認められた。さらに、それらのほとんどはKi67陰性であった。活性型ビタミンD_3の投与、卵巣切除、骨折治癒過程におけるpOCPの局在および量的変化については、現在解析中である。(計画 3)pOCPへの分化に必須なシグナル伝達経路の解析:RANKのプロモーター制御下にCre組み換え酵素を発現するマウスは現在作製中である。作製後破骨細胞分化に必要と考えられてきたシグナル伝達分子(p38MAPキナーゼ、NFATc1など)をloxP siteで挟んだマウスを構築し、生体内の造血ニッチにおけるpOCPへの分化に必須なシグナル伝達経路を明らかにしていく。
|