本年度も昨年度に引き続きパノラマX線写真からの骨梁抽出法(以前の研究で開発した方法)を用いて下顎骨骨梁の画像を線画像化し、抽出した骨梁の角度と長さを調査し、全身の骨密度との関連を調査した。調査対象は1996年以降、広島大学病院歯科放射線科に骨密度毒低のため受診した患者200人のパノラマエックス線写真と腰椎、大腿骨骨密度検査の結果である。前年までの研究で歯根に対して90度の角度に近い向きの骨梁が減少しにくい傾向にあることが分かったため、骨梁の長さとその角度を計測することで、健常な骨密度を有している人と骨密度の低下を起こしている人の間に違いがあると予測した。前年までの研究で開発した画像処理アルゴリズムにて線画像化した顎骨海綿骨骨梁構造の各線素の長さ(ピクセル数)と角度を計測し、歯根に対して直角に近い角度の骨梁の平均の長さと歯根に平行に近い角度の骨梁の長さの平均を算出し、それらの差を計算した。この計測値を、骨密度検査の結果正常な骨密度であった人のグループと、骨減少症または骨粗鬆症となっていた人のグループに違いがないか検討した。正常な骨密度のグループでは約13ピクセル、骨密度の低下していたグループでは約21ピクセルとなっていた。この結果は骨密度減少者では歯根に対し平行な骨梁が主に減少するということを示唆していた。この結果を基に、歯根に対して平行な骨梁成分の減少率を調べることで骨粗鬆症をスクリーニングできる可能性が示唆された。また、同時に開発した下顎骨下縁皮質骨形態変化を用いた骨粗鬆症診断支援システムは、朝日レントゲン株式会社製画像管理ソフトADR+に搭載し、臨床応用可能か実験中である。
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