放射線治療相当のエックス線を照射した後の顎口腔領域の外科処置が、その創傷治癒にもたらす影響について検討するために、ラット頭頸部に10Gyのエックス線照射を行った。エックス線照射直後、2週間後および1か月後に上顎臼歯部に骨欠損を作り、その創傷治癒の違いについてエックス線学的および組織学的手法を用いて比較検討した。 その結果、エックス線照射直後と比較し、2週間後に骨欠損を作ったラットでは創傷治癒の初期に破骨細胞がより多く発現し、創傷治癒に遅れが認められた。それに対してエックス線1か月後に骨欠損を作ったラットは、直後に骨欠損を作った群と比較して、創傷治癒の早期に破骨細胞が多く発現したものの、4週間経過後における骨欠損内の新生骨の充足率はほぼ同じ値を示した。 これらの結果から、エックス線照射直後よりも2週間後に骨欠損を作るほうが、創傷治癒に及ぼすエックス線照射の影響が大きくなり、1か月後に骨欠損を作った場合、その影響が小さくなる可能性が示唆されたた。そこで現在、エックス線照射後の骨欠損の治癒過程における破骨細胞の役割について検討を行っている。特に破骨細胞分化因子であるRANKおよびRANKL、破骨細胞形成抑制因子であるOPGについて、エックス線照射がこれらの因子に及ぼす影響、骨創傷治癒過程におけるそれらの局在、その経時的変化について、免疫組織化学的手法で検討する予定である。
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