本年度は、顎骨の放射線障害と抜歯時期との関係、低カルシウム飼料飼育による放射線障害の変化ついて検討を行った。 ラットの顎部に10Gyのエックス線を照射し、1日後、2週間後、1ヵ月後に上顎右側第一臼歯を抜去し、その治癒を組織化学的に観察した。その結果、照射1日後抜歯と比較して2週間後抜歯では、抜歯2週目においても抜歯創内に破骨細胞が多数認められ、治癒が遅れることがわかった。照射1ヵ月後抜歯の抜歯創内の骨充足率は、無照射抜歯と比較すると低いが、2週間後抜歯と比較して高くなることがわかった。抜歯創内のALP活性はエックス線照射、抜歯時期による差はみられなかった。ラットのエックス線照射モデルでは2週間以降、抜歯創治癒への影響は軽減したが、顎骨の放射線障害は、照射後長期間が経過しても持続する可能性が示唆された。 標準飼料、低カルシウム飼料で飼育した雌性Wistar系ラットに10Gyのエックス線を照射し、2週間後に上顎右側第一臼歯を抜去し、その治癒を組織学的に観察した。その結果、低カルシウム飼料で飼育したラットの放射線照射後の抜歯創治癒は、標準飼料で飼育したラットの放射線照射後の抜歯創治癒と比較して遅れることがわかった。標準飼料で飼育したラットと比較して低カルシウム飼料で飼育したラットでは、抜歯創内のALP活性は低下し、破骨細胞が多く認められた。骨粗鬆症状態の顎骨では、放射線照射の影響が増強される可能性が示唆されたが、今後、さらに詳細な検討が必要であると考えられた。
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