近年、様々な生体材料に自己細胞および増殖・分化因子を組み合わせたティッシュエンジニアリングが開発され発展しつつある。本年はティッシュエンジニアリングに組み合ねせるための自己の細胞として可能性を有すると考えられるヒト智歯歯胚由来の間葉系幹細胞についての検討を行った。 智歯歯胚は矯正学的理由により抜去したものを使用し、分離した間葉系幹細胞について免疫組織化学的に検討した。 実験には8歳から12歳までの抜去された埋伏智歯を用いパラフォルムアルデヒドにて固定後パラフィン包埋ならびに凍結包埋し、HE染色および間葉系幹細胞に特異的に交差するSTRO-1、CD146による染色を施した。 得られたヒト智歯歯胚は、歯冠形成途上であり歯根形成は開始していなかった。組織学的にはBellStageに相当し象牙前質の形成がみられたが石灰化はしていなかった。エナメル芽細胞の極性化が認められたが、エナメル質は未形成であった。STRO-1およびCD146による染色の結果、いずれも特にエナメル芽細胞ならびに歯乳頭の血管周囲の細胞に強い発現とさらに、象牙芽細胞の一部にも陽性反応を認めた。 さらに、ヒト智歯歯胚を細胞培養し、さらにはSTRO-1陽性細胞の分離回収をおこなったところ全細胞にしめる間葉系幹細胞の割合はおおよそ7%であった。 以上より、歯根膜組織を再構築することを目的としティッシュエンジニアリングに用いる自己由来細胞としてヒト智歯由来の間葉系幹細胞が有用であることが示唆され、今後、スキャフォルドとの親和性等さらに検討を行うことが必要と考えられた。
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