近年、様々な生体材料に自己細胞および増殖・分化因子を組み合わせたティッシュエンジニアリングが開発きれ発展しつつある。さらには、人工多能性幹細胞(iPs細胞)を代表とする胚性幹細胞(ES細胞)にかわる多分化能を有する細胞の開発、研究が行われている。 本年も引き続きティッシュエンジニアリング材料に組み合わせるため、自己由来の細胞として大きな可能性を有すると考えるヒト智歯歯胚由来間葉系幹細胞についての検討を行った。智歯歯胚は8歳から12歳までの矯正学的理由により抜去された埋伏智歯を使用し、実験に供することの同意を得ている。 抜去したヒト智歯歯胚をディスパーゼ・コラゲナーゼ酵素下にて細胞単位まで分離回収し培養を行った。幹細胞マーカーとされるSTRO-1生細胞に対し、磁石抗体を応用したDynabeads^[○!R]を用い、分離回収をおこなった。全細胞にしめる間葉系幹細胞の割合は6%であった。また、それら磁石抗体を再分離し、さらに培養を継続、細胞の増殖を確認している。さらに、抜去天然歯由来の歯根膜細胞からSTRO-1陽性細胞を分離し同様の実験を行った。その結果、回収率は2.2%と有意に低かった。さらには歯胚由来の細胞は培養経過においてALP活性及びタンパク量測定で歯根膜由来細胞に比べ高い値を示すことを確認した。 以上より、歯根膜組織を再構築することを目的としティッシュエンジニアリングに用いる自己由来細胞のソースとしてヒト智歯由来の間葉系幹細胞が有用であることが示唆され、今後、スキャフォルドとの親和性等さらに検討を行うことが必要と考えられた。
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