研究概要 |
近年開発されたNd : YAGレーザーは、最高出力で1パルス当たり3000mJまで出力が可能であり、さらに酸化チタン乳液をファイバー先端にスプレーして冷却することが最大の特徴である。酸化チタンは,化学繊維・紙・塗料・印刷・インキ・化粧品等に用いられており,化学的に極めて安定で,アレルギー反応を起こしにくく,生体に為害作用がないことが知られている。また、乾燥させない限り完全に硬化せず、レーザー照射野からの排出も容易である。この酸化チタン乳液を高出力のNd : YAGレーザーと併用することで、直進光を散乱光に変え、深部組織へのレーザー光の影響を抑え、象牙質だけでなくエナメル質まで光分解切削を可能としている。よって、Nd : YAGレーザー装置と酸化チタン乳液の硬組織に対する影響を検討するため、ヒト単根抜去歯を移動ステージに固定し、根管内にファイバーを根尖まで挿入して一定のスピードで引き上げながら様々なエネルギー設定でレーザー照射を行った。その後レントゲン撮影による根管形成の程度、実体顕微鏡・走査型電子顕微鏡(SEM)による形態学的観察を行った。その結果、本実験の条件下では,120 mJ30 pps 4回照射群で形態学的な変化が小さく,最も切削効率が高かった。したがって,熱エネルギーが蓄積しないよう適切な照射条件を設定することが,根管内照射を行う上で重要であることが推察された。実際の臨床において,レーザーによる根管形成は,盲目的な作業となるため,形成の程度を評価することは困難である。しかし,従来の手用ファ'イルや機械的切削器具と異なり,スメア層を形成せず,しかもdebrisを根尖方向に押し出さずに根管形成することが可能である。
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