研究概要 |
本研究では、各種レーザーの防護眼鏡および顕微鏡を介する透過率を測定することにより、レーザー使用の安全性を明らかにすることを目的とした。実験には、Nd:YAGレーザー・Er:YAGレーザー・半導体レーザーの3種類の歯科用レーザーを使用した。防護眼鏡は3種類のレーザーとさらに防塵眼鏡を用いて、顕微鏡鏡筒と併用したものと各種条件設定して、レーザー光の透過エネルギーと各レーザーにおける眼球に対する最大許容露光量(MPE,JIS C 6802)を基準として比較検討した。結果は、専用の防護眼鏡の使用により、すべてのレーザーにおいて、透過エネルギーが0になった。しかし、Nd:YAGレーザー照射時は専用防護眼鏡以外で、また半導体レーザー照射時は専用眼鏡およびNd:YAGレーザー用防護眼鏡以外で、透過エネルギーはMPEを超える値となった。以上より、他の防護眼鏡の使用や裸眼では、MPEを超える透過エネルギーが眼球に到達し、障害が生じる恐れがある。また本実験条件下では、顕微鏡下でのレーザー使用の際、専用防護眼鏡の着用時は透過エネルギーが0となり、安全に使用できると思われた。また、酸化チタンは,化学繊維・紙・塗料・印刷・インキ・化粧品等に用いられており,化学的に極めて安定で,アレルギー反応を起こしにくく,生体に為害作用がないことが知られている。また、乾燥させない限り完全に硬化せず、レーザー照射野からの排出も容易である。この酸化チタン乳液を高出力のNd:YAGレーザーと併用することで、直進光を散乱光に変え、深部組織へのレーザー光の影響を抑え、象牙質だけでなくエナメル質まで光分解切削を可能としている。よって、Nd:YAGレーザー装置と酸化チタン乳液の硬組織に対する影響を検討するため、ヒト単根抜去歯を移動ステージに固定し、根管内にファイバーを根尖まで挿入して一定のスピードで引き上げながら様々なエネルギー設定でレーザー照射を行った。その後レントゲン撮影による根管形成の程度、実体顕微鏡・走査型電子顕微鏡(SEM)による形態学的観察を行った。その結果、本実験の条件下では,120 mJ30 pps4回照射群で形態学的な変化が小さく,最も切削効率が高かった。したがって,熱エネルギーが蓄積しないよう適切な照射条件を設定することが,根管内照射を行う上で重要であることが推察された。
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