Er : YAGレーザー照射に対する象牙質/歯髄複合体の反応様式についての知見は未だ十分とはいえない。そこで本研究では、Er : YAGレーザーによる。窩洞形成の歯髄反応を組織学的および免疫組織化学的に観察し、同レーザー照射後の象牙質/歯髄複合体の修復・再生機構の詳細を解明することを目的とした。 ラットの上顎第一臼歯近心に、Er : YAGレーザーを用いて、窩洞形成し、フロアブルレジンにて修復処置を施し、継時的に組織学的・免疫組織化学的検索を行った。HE染色による組織学的観察を行うとともに、酵素抗体法により、象牙芽細胞分化マーカーとしてHeat-shock protein 25(Hsp-25)、中間径フィラメントnestinの発現を観察するとともに、BrdUで標識された細胞の動態解析を行った。その結果、窩洞形成直後および6時問後では、窩洞直下での象牙芽細胞の配列の乱れは認められたが、Hsp-25およびnestin陽性反応の消失には至らなかった。しかしながら、12および24時間後には、窩洞直下でHsp-25およびnestin陽性反応の消失がみられた。その後、2日目以降でHsp-25およびnestin陽性反応が同部の象牙芽細胞様細胞に観察されるようになった。BrdU陽性細胞は、2日および3日後に歯髄中に多く検出された。 以上の研究成果を得たことにより、Er : YAGレーザー照射後の象牙質/歯髄複合体の修復・再生過程の実態が不明確であるという問題点が生物学的視点から明確となりEr : YAGレーザーの臨床応用に向けた指針の一つとなり得たと考える。
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