ヒト歯髄細胞の培養とヒト象牙質シアロリンタンパク質のクローニングを行うため、はじめに北海道医療大学歯科内科クリニックにおいて、矯正理由により便宜抜去された歯牙から無菌的に歯髄組織を取り出し、0.1%コラゲナーゼ処理後ディッシュに播種し、4〜8継代後の歯髄細胞を得た。アスコルビン酸とβ-グリセロリン酸で1週間処理された歯髄細胞(この条件で象牙質シアロリンタンパク質が発現してくることは、すでに多くの論文で報告されている。)よりDNAを調整し、PCR法によりヒト象牙質シアロリンタンパク質の全長遺伝子の増幅を試みたが、発現量が少なく成功しなかったため、次にラットの初代培養歯髄細胞を調製し象牙質シアロリンタンパク質の全長遺伝子の増幅を行った。結果として、象牙質シアロタンパク質と象牙質リンタンパク質の各々の遺伝子断片が得られたので、象牙質シアロリンタンパク質発現ベクターの構築および安定発現株の確立を目指した。しかし、C末端にHis tagを有する哺乳類細胞発現ベクター(pGC dual vector)への象牙質シアロリンタンパク質のサブクローニングに成功しなかったので、N末端にGST tagを持つ大腸菌発現用ベクターにサブクローニングした。シークエンスにより遺伝子配列を確認したが変異や欠損は見られず問題なかった。作製されたプラスミドをBL21にトランスフォーメンションし、Glutathione Sepharoseにてリコンビナントタンパク質を精製した。現在、象牙質シアロリンタンパク質の成熟化において機能するプロテアーゼを同定するため、ラット歯髄細胞の抽出液画分によるリコンビナント象牙質シアロリンタンパク質のプロセシングを詳細に解析中である。
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