今回の研究では、多人数の頭頸部悪性腫瘍患者を対象とし、撮影済みの術後再発診断用CT画像からの声道抽出方法の標準化を試みることとした。今回使用したCT画像は、東京医科歯科大学歯学部附属病院において上顎悪性腫瘍の切除手術をうけた後、術後の再発有無の精密検査を目的として撮像された5人の患者のものである。撮像装置は、東京医科歯科大学歯学部附属病院歯科放射線外来のSingle Beam CT(Siemens Somatom Plus-S)が使用され、撮像条件はslice thickness/interval=3mm/3mmであった。結果として、今回の研究より、5人の頭頸部腫瘍切除患者の、術後の再発診断用CT画像から声道を抽出し、ソフトウェアを使用することにより3次元化を行い、光造形システムによって実際の声道模型を作ることが可能となった。特に、今までほとんど行われてこなかったCT画像における、声道部分である空気の抽出について、標準化のための詳細な検討を行ったこと(Fig.2)は、今後の研究にとって非常に重要であると考えられる。しかしながら、今回使用したCT画像は、あくまで術後の再発の診断を目的として撮像されたものであり、また発音時の形態解析に使用されることの想定はされていない。そのため特定の母音発音時で撮影された画像ではない。またCT撮像装置の機構上、仰臥位で撮影されたものである。今後は、発音状態での声道形態を記録できるよう、CTだけでなくMRIや口腔内印象採得など様々な方法とのデータ統合を検討する必要がある。 今回の研究により、今後いくつかの課題が残るものの実際の声道模型を製作することが可能となった。今後この模型を使用して声道伝達特性を求め^<4)>、発音障害の原因を探り、また顎補綴装置においてどの部位を補綴すれば効果的に発音障害を改善できるのかなどについて、研究を進めて行く必要がある。
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